千賀ゆう子企画
2002年 ギリシア・ポーランドツアー


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ギリシアの新聞記事より抜粋

演劇がもつ魔法の音楽・・・抜粋による上演
日本の劇団による「オレスティア」

千賀ゆう子企画
エルムポリ祭2002
7月6日(土)、7日(日)



 演劇がもっている本当の力を軽視している人は少なくない。そういう人は日本人による古代悲劇の公演は、自分たちには関係がないと思っているのではないだろうか。なぜなら千賀ゆう子企画の2回の公演を観たのは、シロス島の限られた人々に過ぎなかったからだ。しかもその観客の中に、目利きの演劇愛好家が居なかった。
 しかし演劇というものを決して軽視すべきではないだろう。1つ確実に言えるのは、観ればわかる、ということだ。最も重要なことは、ごくまれにしか「味わえ」ない体験を、日本の劇団がもってきた最高レベルの美的感覚あふれる舞台作品を、観逃してしまったという点だ。
 「特定な国の」言葉(この場合は日本語)は、観客との距離を遠ざけてしまうかもしれない。日本語の音や文字を知らないということで、我々は意味不明のものを想起してしまう。だが、演劇の言語は、表情や身体の動き、間を使って、人間の魂の最も深い部分を表現することができる。表現こそ国際語なのだ。
 多かれ少なかれ、我々は「オレスティア」の神話を知っている。トロイア戦争の恐るべき結末は、勝者を敗者に変え、情け容赦なく追跡し、祖国に戻った後でさえその手をゆるめない。この有名な神話の事件から人が何も学ばないために、同じ事が繰り返されている。日本の劇団はこの神話を使い、時空を越えて、自分たちの苦悩を表現しようと試みた。自分たちの手法で、国際的文化遺産である古代悲劇の荘厳さを使って、苦悩を表現したのである。実際、古代ギリシアの伝統と日本の伝統、この2つの要素の結合は魅力的だった。スポットライトが消えると、数十個の照明ともいえる深紅に光るボールを手にした役者たちが劇場の中を通り過ぎる。不思議な音楽(東洋とギリシアの混合音楽)が流れる中で、(舞台上で活き活きと演じられた)儀式が執り行われる。本物の演劇がもつ魔術的な力がどれだけ大きなものかを実感する瞬間だった。
 クリタイメストラを演じた偉大な日本人女優千賀ゆう子(我々は彼女のことをこれから何年も忘れることができないだろう)は観客の目を釘付けにし、またコロスは模範的な動きをみせた。(とはいえ、秀でているというのは違う。何と表現したら良いのだろうか?)魔術を仕上げたのは、劇に対する自らの情熱を伝えた役者たち一人一人であり、魅力ある内的規律に従って動いていた。全体的に、素晴らしくそして「現代的な」演出・舞台美術を提出していた。(全て舞台上で行われる。袖はなく、役者は舞台上で「変身する」のである。)日本の劇団は驚くべき公演をみせてくれた。昨年日本からきた作品も素晴らしかったが、今年も引き続き素晴らしい公演が行われた。昨年の作品は、子供のための日本舞踊劇で「エルムポリ祭2001」の一環として上演された。
 願わくば、ギリシア日本協会「ラフカディオ・ハーン」と国際交流基金、そしてエルムポリ市が協力をし、来年もまた素晴らしい作品を提供して欲しいものだ。

【写真解説:日本の劇団による「オレスティア」演技という言語は世界共通】


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